第34回出雲駅伝区間予想【東京国際大学編】

 

はじめに

 東京国際大学は、2011年に創立され、近年になって上位に名を連ねるようになった駅伝新興校である。駅伝部創立の歴史を辿ると、監督の大志田秀次が校内放送で部員募集を呼びかけ、その時集まったのは男子3名、女子1名の計4名。一からチームを作り上げ、現在は箱根駅伝で3年連続シード獲得、前回の出雲駅伝は初出場で見事優勝を果たした。

 同校にはイエゴン・ヴィンセントという他大学も含めた歴代の外国人留学生ランナーの中でも最強といっていい選手が控えているが、丹所健や山谷昌也などの日本人選手も実力があり、決して留学生頼みではない層の厚さが魅力的である。

 また監督の大志田秀次は中央大学の黄金期にコーチとしてチームに携わっていた人物なので、そこで培ったノウハウがチームに還元されれば黄金期を築く可能性を秘めたチームである。

 

大志田秀次・東京国際大学駅伝部監督



 

区間配置の傾向

 出雲駅伝は通称スピード駅伝と呼ばれ、他の三大駅伝と比較して走行距離が短い。

 

出雲駅伝(45.1km)】

 1区8.0kmー2区5.8kmー3区8.5kmー4区6.2kmー5区6.4kmー6区10.2km

 

全日本大学駅伝(106.8km)】

 1区9.5kmー2区11.1kmー3区11.9kmー4区11.8km

 5区12.4kmー6区12.8kmー7区17.6kmー8区19.7km

 

箱根駅伝(217.1km)】

 1区21.3kmー2区23.1kmー3区21.4kmー4区20.9kmー5区20.8km

 6区20.8kmー7区21.3kmー8区21.4kmー9区23.1kmー10区23.0km

 

 距離が短い駅伝なだけに、前半で遅れたチームが後半巻き返すのはなかなか難しく、前半区間に力のある選手を配置するのがセオリーとなりつつある。一方、外国人留学生などの大砲を持っているチームは、アンカーにその大エースを添えて、前半区間で耐えてラストで逆転するオーダーを組む場合もある。

 東京国際大学は前回大会、日本人エースの丹所が3区、大エースのヴィンセントが6区を走った。戦前予想されたレース展開としては、東京国際大学はヴィンセントにタスキが渡るまでに、何とか先頭との差を1分以内で食らいついておきたい。先頭と1分差までなら、アンカーのヴィンセントで逆転できる。逆に他の大学は、5区終了時点までに東京国際大学から少しでもリードを奪い、アンカーの選手で何とか逃げ切る、そんな展開が予想されていた。

 しかしながら実際は3区の丹所で首位に立つと、4区5区の白井宗像も1位をキープ。首位でタスキを受けたヴィンセントは暑さに予想以上に体力を消耗されながらも区間賞の走りで見事1位に輝いた。昨年結果を出した3区丹所と6区ヴィンセント、ここは今回も変えてこないのかなと思っている。

 懸念点は、前回流れを作った1区と2区。1区は丹所に次ぐ実力者の山谷昌也、2区は成長著しい当時ルーキーの佐藤榛紀がそれぞれ好走したが、今回はコンディション不良で両名ともエントリーから外れている。いくら丹所といえども1、2区で出遅れたら他大学のエースに対しなかなかアドバンテージは取れない。更に前回5区区間3位の宗像聖もエントリー外なので、この3区間の穴埋めが重要である。

 

 

区間予想

 以上を踏まえたうえで、各区間区間予想をしてみる。なお、既に発表された今回のエントリーメンバーは以下の通り。この10名の中から6人が走ることになる。

 

 【4年生】堀畑佳吾、丹所健、イエゴン・ヴィンセント

 【3年生】村松敬哲、林優策、川端拳史

 【2年生】白井勇佑、冨永昌輝、牛誠偉、木村海斗

 【1年生】

 

 

●1区予想:冨永昌輝

 

冨永昌輝(2年生)

 

 山谷が走らないことで1区は誰問題が出るわけだが、1区出走に意欲を見せていると噂の冨永予想。丹所&ヴィンセントを除くエントリー選手の中では8kmの距離には最も適性があるのではないか。

 箱根駅伝は1年生ながら前回大会7区を走り区間6位の成績を残しており、主力の1人として成長している。9月の日体大記録会で13分台を出すなど調子も上向きである。

 

 

 

●2区予想:牛誠偉

 

牛誠偉(2年生)



 今年成長株の2年生。5,000mで13分50秒と自己記録を更新し、今年絶好調と言える選手。最初だから繋ぎの4区くらいでもよさそうだが、大志田監督は過去の実績より現在の実力を素直に評価する区間配置を行う監督だと思っているので、今年の勢いを買って2区予想。昨年も1年生の佐藤を起用していることから十分あるのではないか(昨年は1区に山谷がいたのもあっただろうが)。

 ちなみに彼のお姉さんは拓殖大学で長距離選手として活躍している牛佳慧(ぎゅう・かえ)選手。拓殖大学スーパーエース不破聖衣来を中心にメキメキ力を付けている大学で、こちらにも注目だ。

 

牛佳慧(拓殖大学4年生)



 

●3区予想:丹所健

 

丹所健(4年生)

 

 ヴィンセントがいるため、「日本人エース」という2番手エース的な書かれ方をすることが多いが、駅伝における実績は現役学生の中でも最強クラス。

 1、2年時は箱根駅伝で1区を走りともに区間2桁順位と成長途上だったが、3年生のトラックシーズンで遂に覚醒し好記録を連発。前回大会はこの3区丹所で首位に立ちそのままチームは優勝、全日本大学駅伝は6区で区間新記録樹立、箱根駅伝は3区で従来の日本人最高記録を更新するなど急激に成長した。出雲3区の区間賞は創価大学のフィリップ・ムルワなので、去年の3大駅伝では日本人に負けていない。

 今年はトラックシーズンで昨年ほどの成績は残せていないが、地力がある選手なので問題なく駅伝には合わせてくるだろう。

 

 

●4区予想:白井勇佑

 

白井勇佑(2年生)

 

 昨年と同様4区。ちなみに昨年は区間5位と堅実に走り、首位をがっちりキープした。出雲駅伝の距離における実力では冨永や牛を上回ると見ており前半区間の投入も考えたが、丹所から受けた流れを最も勢いづけた状態で後続に渡せるのは誰かと考えた結果、白井しかいないのではないかと考えた。

 また、冨永と牛が前半区間をしっかり走ってくれるだろうという公算がある程度見えてきている(はず)という前提もある。

 

 

●5区:村松敬哲

 

村松敬哲(3年生)

 

 昨年5区を3位で走った宗像聖が今大会欠場となり、この区間も誰が走るのか議論が繰り広げられている。その中で3年生の村松を推したい。

 理由は前回大会の箱根駅伝で、村松は8区を走り区間6位の好成績を残している。箱根の8区といえば後半に待ち構える遊行寺の坂をはじめとしたタフなコース。そこでしっかり上位で走った村松は上りにもある程度対応できると考えている。

 本ブログで何度か触れたが出雲駅伝の5区は全体的にアップダウンが多い区間で、8区を走り切った村松なら十分攻略できるのではないか。

 

 

●6区:イエゴン・ヴィンセント

 

イエゴン・ヴィンセント(4年生)

 

 「この選手がどの区間を走るのか?」によって各大学の区間配置に多大なる影響を与える怪物ランナー。1年生の箱根駅伝は3区を走り、それまでの区間記録1時間1分26秒を2分以上上回る59分25秒の驚愕の記録を樹立。

 翌年は、前年に東洋大学の相澤晃が記録した1時間5分57秒の区間記録を8秒更新する1時間5分49秒の記録を叩き出した。

 とにかく東京国際の選手は「ヴィンセントまでタスキをつなげば何とかしてくれる」このメンタルで試合に臨める安心感は計り知れない。

 説明不要!今年も6区!

 

 

区間予想まとめ

 

●1区予想:冨永昌輝

●2区予想:牛誠偉

●3区予想:丹所健

●4区予想:白井勇佑

●5区予想:村松敬哲

●6区予想:イエゴン・ヴィンセント

 

 ちなみに個人的な話だが、筆者は職場の後輩と「出雲の区間予想を当てたらコーヒーとプレミアムロールケーキを買ってもらう」という契約を交わしている。

 見事的中させ、分析力の証明と優雅なコーヒータイムを手に入れたいものだ。